インターネットで見る世界の気象

菊地時夫(高知大学理学部)
1996年7月25日 大阪市立科学館

はじめに

気象学と情報通信、一見無縁のようでこのふたつには切っ ても切れない縁があります。情報ハイウェイ構想など、 インターネットの派手な面が騒がれていますが、気象衛 星や気象通報、天気予報など気象データがどのようにイ ンターネットの上を流れているかを見てみたいと思いま す。

インターネットの気象サイト探検

高知大学の気象情報ページ

まず、最初に筆者が作っている 「高知大学の気象情報ページ」 を見ていただきましょう。ここでは、5種類の気象衛星画像 を公開しており、様々の気象情報への入り口が作ってあります。 例えば、気象衛星ひまわり5号(GMS-5)の画像や、地球全体の 雲画像、南極地域の画像があります。実は、これらの画像は 高知大学において受信したり画像処理をほどこしているもの ではありません。これから、その元になっている大学や研究機関 をインターネット経由で訪れて、世界の気象を探検して みたいと思います。

ウィスコンシン大学気象衛星画像

気象衛星ひまわりは日本の気象衛星ですが、実はそこに使われて いる技術は、ほとんどアメリカ製です。特に地球の雲を観察する カメラは主にアメリカのウィスコンシン大学 のVerner E. Suomi教授のグループが開発した技術をもとにしています。 そのため、気象衛星画像データの収集においてもその処理 に関しても、世界のトップを走っています。 ここには、アメリカの 気象衛星である、GOES-8 号(大西洋からアメリカ本土) GOES-9号(東太平洋)の画像だけでなく、上記2衛星の画像に日本のひまわり(GMS)とヨーロッパの Meteosatの画像を繋ぎ合わせたもの、この画像の雲の部分を 取り出して海洋、気象観測の結果と合成した グローバルモンタージュ画像、さらに南極地域の 静止・極軌道衛星の画像を合成したものなどが提供されています。

イリノイ大学の天気図

世界の天気図に関しては、 イリノイ大学 気象可視化サーバーを見てみましょう。 イリノイ大学は気象学の研究に伝統が あるだけでなく、スーパーコンピュータセンター があるなど計算機の利用の分野でも進んでいます。 天気図や予報図は、世界の主な国の気象局がそれぞれに作成 したものを無線ファックスで放送しています。しかし、インターネット に公開されている天気図は、色を使うなどして見やすくして あるのが特徴です。

ここでは、気象通報をもとに解析図を作成するだけでなく ETA, ECMWF といった予報センターからの 予報をもとに予報図を作成して公開しています。 余談ながら、これらの予報データは特別に許可を得ないと 取得することはできませんが、そのデータをもとに図を作って 公開することは認められているようです。 以前はあらかじめ作成した天気図を取り出すという形で アクセスしていましたが、最近では利用者の要求で天気図に 表示するデータやその形式を変えられるような仕組みも提供 されています。

最近話題の技術のひとつに、JavaというWWWの上で使うプログラム言語 がありますが、ここでは Javaを使って利用者が天気図を作成できる 仕組みも提供しています。

NOAA 気候データ

ここまでは、現在の気象を見てきました。それでは、過去の いついつの天気はどうだったかとか、1月のワシントンの 平均気温を知りたいという時はどうしたらよいでしょうか。 インターネットへのデータ提供は大学から始まりましたが、 アメリカでは気象局(NWS)や大気海洋庁(NOAA)が積極的に こうした資料の提供をおこなっています。 ここでは、数多い NOAA のサーバー の中から 気候データセンターを 訪れ、気候データのグラフ化をしてみましょう。 これは NOAA気候データ表示サーバーにアクセスしたところで す。ここで、どのようなデータ表示をおこなうかを指定したうえで、 地図の中から目的の地域を選びます。さらに、例えば日本付近を選ぶと アジア地域の気象ステーションのリストが出るのでそこから大阪を選び、 最高最低気温の表示を選ぶと
のようなグラフを取ることが できます。

インターネットの仕組み

さて、ここで気象学から離れて、インターネットの仕組みに ついて述べてみたいと思います。インターネットとは ひとことでいえば「取り決め」の集まりの世界です。 世界中のあちこちで開発された技術が互いに利用しあえる ようにするために、「標準」を取り決める必要があります。 気象学の世界では、気温は地面から1.5mの高さで遮光通風して 測るというような観測方法の統一や、気象通報式で観測結果を 世界中に知らせる方法などがこれにあたります。

前節でお見せした世界の気象は、「インターネット上の」と 呼んでいましたが、正確にはインターネットの利用法の一部 である、World Wide Web という利用法を使っています。

このWWWで表示される画面のことをホームページと呼んでいますが、 Web Page と呼ぶこともあります。

では、私達がひとつのWeb Page のどこかをクリックした時、 コンピュータは、どのようにして新しい Web Page に飛んでいく のでしょうか。その秘密は、Web Page には、 ハイパーテキスト マークアップ言語(HyperText Markup Language: HTML) という特殊な文書作成の取り決めを使って 情報のありかを埋め込んである、というところにあります。

例えば、「明日の天気予報は気象台に聞けばわかる」という ことをこのHTMLを使って書くと、

<a href="気象台に聞く">明日の天気</a>
のようになります。

HTML を使って書いた文書は、ネットスケープのようなブラウザ を使って読むと < と > で囲まれた部分は見えなく なります。この例では「明日の天気」とだけ表示されるので すが、マウスでクリックすると「気象台に聞く」 の部分が現れたりコンピュータで実行されたりすることになります。 このように、情報のありかを埋め込んである文書をハイパーテキスト と呼びます。

次に、コンピュータがネットワークに繋がっていて、 その「気象台に聞く」というのを、自分の家と気象台にある コンピュータ同士の会話で実現することを考えてみましょう。 この時にも会話の方法を取り決めておく必要があることに気づく と思います。この部分の取り決めがハイパーテキスト転送通信規約 (HyperText Transfer Protocol: HTTP) です。この取り決めでは、文書だけでなく画像・音声など データの種類は何かを教え合うことができるため、ブラウザは 送られてきたデータを間違えずに、画面に表示したりスピーカ で再生したりすることができます。

ところで、「気象台に聞く」なんて書いてコンピュータに理解 できるのでしょうか?この、情報のありかの書き方にも取り決めが あります。これを、ユニフォームリソースロケータ(Uniform Resources Locator: URL ... 一般資源位置記法とでも訳すのでしょうか)と呼びます。

URL の書き方は、例えば

http://www.is.kochi-u.ac.jp/weather/index.html
のように、通信規約の名前(http)、区切りのコロン(:)、 2つのスラッシュ(/)に続くWWW サーバーの名前、スラッシュ で区切った情報への道筋(パス)を書いていきます。

この URL が分かれば、ブラウザに表示されたリンクをたどらなくても、 直接キーボードから入力することで目的の情報を得ることもできる ことになります。

気象情報利用のためのスタートポイント

ここで、今後のインターネット利用に役立つように、 主な気象情報サーバーの URL をあげてみたいと思います。
  1. 高知大学の気象情報ページ
    http://www.is.kochi-u.ac.jp/weather/index.html
  2. ウィスコンシン大学
    http://www.ssec.wisc.edu/
  3. ウィスコンシン大学(リアルタイムデータ)
    http://www.ssec.wisc.edu/data/index.html
  4. イリノイ大学
    http://www.atmos.uiuc.edu/
  5. イリノイ大学(気象可視化サーバー)
    http://covis.atmos.uiuc.edu/covis/visualizer/
  6. イリノイ大学(Java 最新気象情報)
    http://covis.atmos.uiuc.edu/java/weather0.4/Weather.html
  7. アメリカ大気海洋庁(NOAA)
    http://www.noaa.gov/
  8. NOAA 気候データセンター
    http://www.ncdc.noaa.gov/
  9. NOAA 気候データセンター(気候可視化サーバー)
    http://www.ncdc.noaa.gov/onlineprod/gsod/climvis/gsod.html
  10. 気象庁
    http://www.kishou.go.jp/
  11. 気象研究所
    http://www.mri-jma.go.jp/
  12. (社)日本気象学会
    http://wwwsoc.nacsis.ac.jp/msj/
  13. (社)日本気象学会(気象学関連サイトへのリンク)
    http://wwwsoc.nacsis.ac.jp/msj/LINK/meteo-link.html
  14. (社)日本雪氷学会
    http://wwwsoc.nacsis.ac.jp/jssi/
  15. CRC総合研究所応用気象解析部による全国各地の天気予報
    http://www.crc.co.jp/CRC/fg/f3/index.html
  16. (財)日本気象協会
    http://www.jwa.go.jp/
  17. ウェザーニューズインターナショナル(日本)
    http://www.wni.co.jp/

おわりに

現在、マスコミにあおられた形で World Wide Web が流行していて、 派手なホームページで宣伝を行うことがインターネットである かのように思われがちです。しかし、 本来のインターネットは研究情報の交換のために作られたもので、 それが一般大衆にまで広げられることになれば生活に役立つ情報 を伝えるものでなければならないと思います。 それは、単に情報のありかを知らせるというだけでなく、 自ら WWW の中に有用な情報を提供していくことによって 達成されるものと考えます。 今後、日本の気象関係者の努力で、さらに有用な日本の気象情報 Web Page ができていくことを期待したいと思います。

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