ネットワークの動向とリモートセンシングへの応用

     平成6年6月22日高知市にて講演(予定)
          菊地時夫(高知大学理学部 助教授)

はじめに

リモートセンシングのデータを利用するにあたって問題となることのひとつに、 どこに保存されているどのデータに欲しい情報があるかを簡単に知ることが 難しいということがある。大都市(東京)に近い場合には、実際にデータの保存 してある場所へでかけて閲覧するということも、たいした手間ではないかも 知れないが、地方にいる場合には大きな障害になる。

一方、最近の通信技術の発達は目覚ましいものがあり、ファクシミリを利用する ことは日常のことになっている。さらに、パソコン通信などによって、手紙 (メール)をやりとりしたり、会議(電子掲示板)に利用することも、盛んに なってきている。

高知大学においては、こうした電子的なメッセージ交換をリモートセンシング データの閲覧に利用できるための技術の研究をおこなってきており、この 機会に紹介したい。

インターネット

インターネットとは、主に米国で発達した大学や政府などの研究機関を相互に 接続するための、計算機ネットワークである。最近まで「研究用」に利用目的 が限定されていたため、一般の利用ができなかったが、アメリカのクリントン 大統領とゴア副大統領が推進しようとしている、情報スーパーハイウェイ構想 によって急激に世間の脚光をあびるようになった。実際、アメリカではインター ネットの商業利用が認められるようになり、ネット上で商売(製品の宣伝・ 注文の受付・納入機器の保守管理など)をする企業も増えてきている。

日本においても、地域によっては企業や個人が(専用・公衆)通信回線を使って インターネットに加入する例が増えてきており、今やインフォメーション・ インフラストラクチャ(情報基盤)としての地位を確立しつつある。 (表1)

このようにインターネットが、研究用ネットワークから情報基盤としての発展して いった理由は、主にアメリカを中心とする研究者達がよってたかって便利なユーザ インターフェースを開発してきたこと、構内LANの持つ高速データ転送の能力 が広域ネットワーク (WAN) でも利用できるまでになってきたことなどがある。



表1:日本のインターネット加入組織
(gopher://gopher.nic.ad.jp/00/ftp/jpnic/domain-list.txtによる)

  ドメイン         参加組織数
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
JP                  3
AD(ネットワーク管理)       26
AC(大学・高専・等)       388
CO(会社)            904
GO(政府)            112
OR(組織)            120
地域ドメイン            40

Mosaic --- インターネットの情報サービス

インターネットはもともと研究目的であるため、無料の情報提供システムが 発達しており、メール配送やニュースの他に、 プログラムや文書などのファイル取得サービス (anonymous FTP)、 そのファイルがどこにあるかを検索するサービス (archie)などが発達 してきた。

さらに、最近になってウィンドウシステムが 普及し、グラフィカル・ユーザ・インターフェースがネットワークの上で使える ようになったことで、盛んに情報提供が行なわれるようになってきた。

中でも、Mosaic(モザイク)は文書情報だけでなく画像・音声・動画なども 扱えるため、非常に人気が高く、商用への開放に伴ってそのソフトウェアライセンス をもとに企業化しようという動きもある。(表2)


表2:Mosaic で扱える情報サービス

サービス名称と詳細

telnet
外部のホストコンピュータに端末として接続する。
mail
電子メールの送信。
news
インターネットニュース。電子掲示板に似ているが、文書はネットワークを 通じて配布され、特定のホストにログインする必要はない。
Anonymous FTP
UNIX標準のファイル転送手順(FTP)を誰でも利用できるように したもの。取得できるファイルには制限がある。
archie
Anonymous FTP で取得できるファイルがどこにあるかを検索する。
gopher
メニューをたどることで、情報を取得していく。
WAIS
Wide Area Information Service の略。キーワードで情報を検索する。
whois
人間(主にネットワーク管理者)についての情報を検索する。
WWW
World-Wide Web の略。ハイパーテキストの形式で蜘の巣のように情報の 網の目を張り巡らせようというプロジェクト。文書の中の言葉に、別の 情報を取得する方法を埋め込むことで、説明や画像・音声などの情報を たどっていくことができる。

高知大学情報科学科の WWW (Mosaic)

高知大学情報科学科においては、本年4月より、試験的に WWW のサービス を開始している。Xmosaic という、Mosaic のウィンドウ版ソフトを起動して このサーバーに接続した状態を図1に示す。

図1:高知大学情報科学科のWWW

ここでは、アンダーラインのついた項目に他の情報へのリンクがあり、 例えば、ひまわりの「最新画像」のところへマウスのポインタを移動して ボタンを押すとその画像が表示されるようになる。(図2)

図2:ひまわりの画像(高知大 WWW で表示できる)

リモートセンシングに関連したインターネットの情報

現在のところ、高知大学の WWW に保持してある、リモートセンシングデータ は、「ひまわり」などの気象衛星の画像データで、オリジナルの解像度よりも 低いため、地域での土地利用解析などには利用できない。しかし、少なくとも 雲についての情報は入っているため、ランドサットなどのデータを注文する際 の参考にはなる。

高知大学以外でも、東京大学生産技術研究所の ftp サーバーのように、 画像データを収集したり、他のサーバーへのリンクを作ることで、いつでも 利用できるように設定してあるところは多い。 いずれにしても、ネットワーク上を流すことのできる情報には今のところ制限 があるため、参考画像データである。

ネットワークの利用法

インターネットをたどって得られる情報は、おおむねこのような参考データに 過ぎないが、対話的に情報を交換できるので、より目的にかなった利用法も 可能になってくる。

例えば、現在宇宙開発事業団地球観測センターにおいては、従来より カタログ情報の提供をオンラインで行なっており、パソコン通信(公衆回線) やインターネットでの接続ができるようになっている。このシステム では、衛星・センサー・時期・雲量などでカタログデータの検索を行なうことが できる。付録にはその検索実行状況を示した。

また、現在同センターにて開発中のネットワークウィンドウシステムを用いた 検索では、これらの検索条件をメニューからマウスで選んでいくだけで 自動的にデータベースにログインして検索を実行することもできるように なっている。

さらに、ネットワークの高度な利用方法を図るには、これらの検索結果から 指定された画像データをユーザのもとにファイル転送することである。 但し、現状ではネットワークの伝送速度がまだ十分速くはないので、閲覧用の 解像度や画質を落としたデータを転送することが考えられている。

JPEG という標準的な圧縮フォーマットを用いると、画質をほとんど損なうことなしに 1/10 〜 1/20 程度の圧縮率を達成することができる。このフォーマットで画像を 送れば、理想的には伝送時間が1/10 〜 1/20 になることになる。

実際には、圧縮されたデータを展開するのに余分の時間がかかるため、 常にこの理想が達成されるわけではないが、現在利用できる 64Kbps の ISDN を利用したときには、十分この圧縮による時間節約の効果が あることがわかっている。(図3)

図3:ある画像(1024 x 900)の伝送に必要な時間

おわりに---これからの展望

アメリカで進められている、情報ハイウェイ構想は、衛星データの利用形態を 変化させることになるだろう。フルサイズのリモートセンシングデータ をネットワークに乗せるには、まだまだ解決しなければならない問題 が沢山あるが、少なくとも間引きや圧縮を施した、閲覧画像データについては 誰でも簡単に手にいれることができるようになるだろう。

高速のディジタル回線を家庭にまで引くのは経済的ではないかもしれないが、 画像圧縮技術を応用したネットワークウィンドウの技術の発展で、低速回線 を用いたウィンドウ環境が実現することで、モザイクのような応用ソフトを 家庭からも利用できるようになるだろう。

衛星画像を供給する側にとっても、閲覧によるデータ選択はリスクを少なくする ことから、利用の枠を広げるのに役立つに違いない。


tkikuchi@is.kochi-u.ac.jp

付録

宇宙開発事業団地球観測センターのオンラインカタログ情報 検索システムの実行状況

% telnet nsaeoc.eoc.nasda.go.jp
Trying 133.56.72.1 ...
Connected to nsaeoc.eoc.nasda.go.jp.

         ***          EOC / NASDA          ***
                  AUTHORIZED USER ONLY
Username: NASDADIR
...
*******************************************************
*                   S I N F O N I A                   *
*  EARTH OBSERVATION SATELLITE DATA INVENTORY SERVICE *
*                                                     *
*                  --- MAIN  MENU ---                 *
*******************************************************
.....
 ( 1 ) .... M O S - 1/1b  MESSER/VTIR/MSR  DATA SEARCH
 ( 2 ) .... LANDSAT 1,2,3  MSS/RBV  DATA SEARCH
 ( 3 ) .... LANDSAT 4,5  MSS/TM   DATA SEARCH
 ( 4 ) .... S P O T  HRV-XS/HRV-P  DATA SEARCH
 ( 5 ) .... J E R S  SAR/OVN/OSW   DATA SEARCH
 ( 6 ) .... E E R S  AMI  DATA SEARCH
 ( 7 ) .... N O A A  HRP/AVH  DATA SEARCH
 ( 8 ) .... DATA SEARCH (Not depend on Satellite)
 ( X ) .... EXIT

 PLEASE ENTER OPTION  ? >3
....
PLEASE INPUT OBSERVATION DATE (790109-940526 )
930501-940430
.... 
THE TYPE OF SENSOR ARE AS FOLLOWS. 
MSS (MULTI SPECTRAL SCANNER): 
 THE MSS MEASURES REFLECTION OF LIGHT FROM THE EARTH 
IN FOUR SPECTRAL BANDS OF VISIBLE-LIGHT AND NEAR-
INFRARED.  COVERING A 185KM SWATH WIDTH WITH 80 METERS
 GROUND RESOLUTION.

TM (THEMATIC MAPPER):  
 THE  TM PROVIDE  BETTER GROUND  RESOLUTION  AND  MORE 
SPECTRAL BANDS THAN  MSS.   COVERING A 185 KILO METERS 
SWATH  WIDTH  IN SEVEN SPECTRAL BANDS OF VISIBLE LIGHT, 
NEAR-INFRARED,  SHORT-WAVE-INFRARED,    AND    THERMAL-
INFRARED. GROUND RESOLUTION IS 30 METERS (THERMAL BAND 
IS 120 METERS).   

EXAMPLES OF SENSOR ASSIGNMENT ARE AS FOLLOWS.  
"M".... MSS DATA WILL BE SEARCHED.   
"T".... TM DATA WILL BE SEARCHED.    
"A".... SEARCH THE DATA FOR ALL SENSORS.   
*OTHER FUNCTIONS*                                          
(/) BACK TO THE PREVIOUS INPUT.
(R) RESTART THE SETTING OF SEARCH CONDITION.
(X) RETURN TO THE MAIN MENU.                               
-----------------------------------------------------------
PLEASE INPUT SENSOR (&&&&)
T
....
BY ROTATING AROUND THE EARTH 233 TIMES, THE LANDSAT COVERS 
ALMOST ALL THE AREA OF THE EARTH.   EACH OF THE 233 ORBITS 
IS IDENTIFIED PATH NUMBER.   EACH PATH IS DEVIDED INTO 248 
ROWS. YOU CAN ASSIGN CERTAIN AREA(SCENE) WITH PATH AND ROW 
NUMBER. THIS IS CALLED WRS (WORLD WIDE REFFERENCE SYSTEM). 

(1) ASSIGN THE SELECTED AREA WITH WRS (PATH/ROW NUMBER).   
(3) ASSIGN THE SELECTED AREA WITH CONVERT LATITUDE/LONGITUDE 
    TO PATH/ROW NUMBER.
(5) ASSIGN THE SELECTED AREA WITH CONVERT PLACE(LAT/LON) TO
    PATH/ROW NUMBER.
*OTHER FUNCTIONS*                                          
(/) BACK TO THE PREVIOUS INPUT.                            
(R) RESTART THE SETTING OF SEARCH CONDITION.               
(X) RETURN TO THE MAIN MENU.                               
-----------------------------------------------------------
PLEASE ENTER OPTION
3
......
......
SEARCHING   DATE:930501--940430      (PATH:110--112  ROW:037--037)         
CONDITION   PLACE:Kouti                 SENSOR:TM                               
            CLOUD : 20% GROUND-STATION:HEOC                                     
 SEARCHING...
 
NUMBER OF SCENES FOUND =           3
 
SEARCHING   DATE:930501--940430      (PATH:110--112  ROW:037--037)         
CONDITION   PLACE:Kouti                 SENSOR:TM                               
            CLOUD : 20% GROUND-STATION:HEOC                                     
------------------------------------------------------------------------
PATH-ROW  SAT  SEN   DATE   GN CLD  PST  QL BANDQUAL PRL   SCENE-CENTER
------------------------------------------------------------------------
D110- 37   L5  TM  93/06/11 N   10% REC   G               N33-10/E134-38        
D110- 37   L5  TM  94/02/22 N   20% REC   G               N33-10/E134-38        
D112- 37   L5  TM  93/11/16 N   10% EVAL  G    G          N33-09/E131-33        
------------------------------------------------------------------------
 TOTAL            3 SCENES