高知大学理学部情報科学科における

World-Wide Web サーバー構築について

菊地 時夫, 本田 理恵

高知大学 理学部 情報科学科

高知大学理学部情報科学科において、World-Wide Web サーバー をたちあげ運用を行なっているので、報告する。 WWW の利用は、公開講座を開いた9月にピークがあったが、 毎月増加する傾向にある。 また、気象学や惑星科学などの研究に関する画像情報を提供 することで、利用されている画像転送技術の問題点などが 明らかになった。

はじめに

高知大学理学部情報科学科においては、1993年に新学科棟の建設と UNIXワークステーション (WS) を主力にした教育用計算機システム の導入がなされた。 これにより、それ以前の情報処理センター教育用端末室のパソコン を使った教育に比較して、計算機教育環境が飛躍的に向上した。 一方、同時に学内ネットワークが整備され、中国四国インターネッ ト協議会(CSI)を介して64Kbpsの専用回線により、インターネット への接続もされるようになった。 こうした状況のもとで、メールやニュースといった文字情報だけで なく、画像や音声を含むマルチメディア情報の利用環境がととのい つつあるといえる。 本学科では、こうした計算機と LAN/Internet 環境の利用促進のた め、試験的に WWW (World-Wide Web) サーバーを立ち上げ、学科の 行事案内や気象学・惑星科学などの研究情報を含む情報サービス を開始しているので、その状況などについて報告する。

高知大学理学部情報科学科の WS/LAN

本学科には、学生教育用の 51台の ワークステーション(WS)および、 各研究室に合計 48 台の パソコン・ワークステーション があり、 それぞれイーサネット(10Mbps)によるローカルエリアネットワーク (LAN)で接続されている。 また、学内には光ファイバー(FDDI) による高速光ネットワーク (100Mbps)が敷設され、学科のLANはルータを介して接続されてい るが、メールサーバーとして導入した1台の WS (Fujitsu, S-4/LX) はコンセントレータを介して直接FDDIに接続されている。 このため、この WS はメール・ニュースなど学科内外の情報交換専 用に利用するのが適当であると考えられる。 今回、WWW サーバーをインストールしたのは、この WS である。 には、情報科学科の LAN の配置状況と、学科外 接続の様子を表してある。

WWW サーバープログラムのインストール

WWW サーバープログラムは、ヨーロッパ高エネルギー研究機構 (CERN) で開発された cern-httpd-3.0を利用した。 当初、このソフトは、``pre'' のついたプレリリース版であった が、1994年11月に最終版に入れ替えを行った。 また、他にWWWサーバープログラムとしては、イリノイ大学の スーパーコンピュータセンター NCSA で開発されたものなどが あるが、多言語対応機能や代理サーバー機能などが充実しているよ うに思われたのでこちらを採用した。 また、既に立ち上げてあった 匿名利用可能のファイル転送 (anonymous FTP) サーバーのディレクトリを 簡易閲覧モード (browse mode) で公開することで anonymous FTP との共用ができ るようにした。

には、httpd の設定条件を記述した、 httpd.conf ファイルの内容を示した。この設定では、 /var/WWW/Public/ 以下をサーバーで公開するデータ領域として いるが、anonymous FTP で公開している、/usr/ftp/pub/ 以下を、/FTP/ にあるものと解釈して公開するようにもなっている。 また /var/WWW/Public/Kochi-U/ 以下のデータ領域は、学内からの アクセスのみが許されるようになっているため、一般公開に問題の 生じる場合でも学内に限って公開することができるようになっている。

代理サーバー(proxy server)とは、何らかの理由でインターネットへ 直接接続ができないユーザのために、外部のサーバーのデータを中継する 機能であるが、一旦中継したデータを、cache機能を併用することで ある程度の期間保存しておくことができるため、本サーバーにおい ても利用できるように設定してある。

また、Xmosaic の持つ多国語機能を利用できるようにも設定がなされ ている。現在のところ日本語と英語のみが利用できるが、日本語の コード体系の違いにもあらかじめコード変換をおこなった文書ファイル を用意することで対応している。 但し、このような使い方は本来の多国語機能の守備範囲を越えたもので あり、将来的に見直さなければならないと思われる。

WWW のクライアント

サーバーの起動とともに、クライアントプログラムである NCSA XmosaicNTT において多国語化したもの をインストールした。 ここで、日本語OpenWindowsで使用できるように、文字の形 (font) などの情報を指定するための app-defaults ファイルに手を加え、 X11のフォントを使わずに日本語が正しく表示されるように設定した。

ユーザはコマンドラインから xmosaic のコマンドを入力することで プログラムの起動を行うわけであるが、直接 xmosaic 本体を起動す るのでなくシェルスクリプトを介して起動することによって、 app-defaults ファイルを必ず読み込むようにしてある。 には、主な変更点を含んだ app-defaults ファイルの一部を、また にはシェルスクリプトを 示した。

WWW サーバーによる公開情報

WWW サーバーにおいては、ハイパーテキストと呼ばれる、文書の中に 情報の所在を埋め込んだテキストを提供することで、マウスのクリック などの簡単な操作で必要とされる情報が簡単に呼び出せるようになっ ている。

は本サーバーに最初に接続した時に表示される画面で、 はその画面表示に使われているデータである。 データに記述される <a href=" "> の部分が情報の所在を 表している。

本サーバーでは、学科の情報を公開するとともに、気象衛星画像などの 研究情報を載せている。に示したのは、index に載せてある主な提供情報のリストである。

学科の情報
情報科学科の情報に関しては、同じサーバー機で提供している ネットワークニュースのうちローカルニュースグループへの リンクをはじめ、高知大学理学部紀要のうち情報科学科の項 など、既存のシステムや原稿を生かせるものが中心となっている。 また、Fax/Modem を利用して、印刷物を画像ファイルで提供 するなど、省力化を図っている。
気象情報
気象情報のセクションでは、日本気象協会が実験的に提供している 「日本付近のひまわりの画像」の他に、東京大学生産技術研究所より FTP で提供されている「アジア地域のひまわりの画像」 と「静止気象衛星による全球画像」、 ウィスコンシン大学の提供による「極軌道衛星による南極画像」があり それぞれ3時間毎に最新の画像を載せている。 さらに、「ひまわりの画像」と「南極画像」については、約3日分の画像を 組み合わせてアニメーションを作っており、気象の変化を見ることも できるようになっている。
気象情報として重要なのは衛星画像だけでなく天気図があげられるが、 現在のところネットワークで利用できるものは限られている。 ヨーロッパ中期気象予報センターのデータをもとに イリノイ大学で製作されている北半球の天気図が利用できるようになって いたので、これも気象情報の一部に掲載している。
惑星科学の情報
惑星科学のセクションでは、「惑星探査関連の画像」や、 1994 年 7 月の木星との衝突で話題になった 「Shoemaker-Levy第 9 彗星」など、インター ネット上で公開されている惑星科学分野の研究情報を集めて提供している。 また、米国のマゼラン探査機による金星表層のレーダー画像を収めた 「CD-ROMの検索ページ」を準備・公開し、研究者の便宜を計っている。
CD-ROMの検索ページでは、ある地形タイプの地名の一覧と、 地名及び緯度・経度で指定された地点を含むファイル名と収録CD-ROMの ボリュームナンバーの表示を行なえるようにしている。 この検索機能はCERN httpd の CGI と HTML の FORM を使って実現した。 CGIとは Common Gateway Interface の略で、httpdの外部プログラム実行のために準備されたスクリプト・ インターフェースである。 WWWのクライアント(この場合 Xmosaic)上で選択、又は、入力された キーワードは FORM の POST機能によって1つの文字列に合成され、 CGIによって外部プログラムの標準入力に与えられる。 一方、外部プログラムの標準出力がHTMLドキュメントとしてWWWの クライアントに渡され、結果を表示するという仕組みになっている。
これらの機能によって、不特定のより広い層の研究者が様々な データに容易にアクセスできるようになると考えられる。 しかし、ある程度のプログラミングの経験者でなければ その作成は難しいと考えられ、普及のためには、より簡潔なスクリプト・ インターフェースの開発が必要であろう。

WWW の利用状況

に、94年4月から12月までの間に高知大の WWW にファイル転送要求のあった件数を載せた。 高知大内部からのアクセスが約3割を占めるが、ホームページ (cover page) へのアクセス、文書ファイルへのアクセス (その他に、ディレクトリへの要求や画像ファイルがある) 件数、気象情報の目次へのアクセスのどれをとっても 増加傾向にあることがわかる。但し、9月に利用のピークが 現われているのは次に述べるように、公開講座での利用が あったためである。 また、12月には冬休みが含まれるため、若干利用が落ちている。

には、サーバーを立ち上げて以来の日毎のアクセス件数をグラフに 示した。150日目近くに際だったピークがあるが、これは大学の 公開講座で50人の受講生が一度に利用したことによるものである。 このことは、においても9月のアクセス件数が特に 多くなって現れている。

また、170日目近くの第2のピークは台風9429号の接近によってアクセスが 増えたためである。 同様に、 惑星科学のページのアクセスが多かった7月は、Shoemaker-Levy第9彗星の木星への衝突 があった月である。 これらのことから、話題性の高いイベントに関する 迅速で視覚的な情報を、WWWで得ようとする傾向があることがわかる。

には1日の時間毎のアクセス数を示した。15時過ぎに アクセスが多くなることがわかる。これは、公開講座におけるアクセス が集中したこともあるが、国内におけるアクセスの頻発する時間帯 に一致してもいる。

WWW における画像転送技術

WWW のブラウザーにはここで触れた、画像表示可能な Mosaic の他に、文字表示だけが可能な www (CERN line mode browser) や、さらに画像表示機能を強化した NetScape などがある。

Mosaic においては、文書内に表示できる画像は XPM, GIF など のフォーマットに限られているが、機能の高い画像表示プログラム を起動することで、JPEG による高圧縮フォーマットも利用できる ようになっている。 一般に自然に近い画像では、伝送線の速度が遅いほど、JPEG による圧縮 が有効になることが実験的にも確かめられている。 このため、文書内の画像は GIF で縮小したものを使い、 フルサイズの画像は要求があれば JPEG で送るというテクニックが 一般的である。

一方、NetScape では文書内の画像に JPEG を利用することもできる ばかりでなく、送られた画像を逐次的に表示することができるように なっているため、転送状況を視覚的にとらえることができる。 さらに、interlace GIF フォーマットの画像を使うと、おおまかな 画像から転送が進むに従って細部が明らかになるので、適当な時点で 転送を中止することもできる。

現在のところ使われてはいないが、Progressive mode JPEGを 利用できれば、より小さいファイルサイズで逐次的に細部を見せて いくような技術が可能となる。これは、インターネットが専用線 による接続から、電話回線を使った個人利用に広がるに際して 有用な技術となる可能性が高い。

おわりに

WWW を用いてインターネットに情報を提供する試みを行なってみて、 大学案内や研究などの情報はもとより、気象情報など生活に密着した 情報に対する要求が高いことがあらためて明らかになった。 一方、台風接近時などアクセス件数が多くなるとネットワークの 混雑により、気象協会からの画像転送ができなくなるという事態 も発生した。この種の情報の伝送には、通常の回線とは別の専用回線 が必要になる可能性が高いことを示している。 また、電話など低速回線を意識した、画像転送技術の有効な利用が今後 の課題であることも示された。 今後は、大学ならではの情報掲載に努力を注ぐと ともに、気象機関や行政機関からの情報提供による WWW Page 作成 の試みを追及していきたい。 (1995 年 1 月 5 日)

参考文献

  1. CERN HTTPD 3.0, available from www0.cern.ch
  2. NCSA Mosaic, available from ftp.ncsa.uiuc.edu
  3. Multiligualized NCSA Mosaic, available from square.ntt.jp
  4. NetScape, available from ftp.mcom.com
  5. 菊地時夫, ``画像圧縮伝送実験用ソフトウェアの開発,'' 高知大学理学部紀要(情報科学), 14F, (1993) 103 -- 110.
  6. Wallace, G. K., ``The JPEG Still Picture Compression Standard,'' Comm. ACM, 34, (1991) 30 -- 44.