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コンピューターネットワークの世界

菊地 時夫・本田 理恵

はじめに

現在のコンピューターは、小型化によるパーソナル化 とともに、計算機間の通信によるネットワーク化の方向に 進んでいると言えます。

この講義では、建物規模のネットワーク(ローカルエリアネットワーク:LAN) から、世界中の計算機を結ぶインターネット(ワイドエリアネットワーク:WAN) までの技術を解説し、実際にそれらのネットワークを利用するソフトウェア を体験していただきます。

LAN

ローカルエリアネットワークの実現には、さまざまの方法がありますが 小規模の LAN では、イ−サネットを使う方法が一般的です。 イ−サネットも初期は 10BASE-5 という、太い同軸ケーブルを使う方法で 素人には扱いにくいものでしたが、10BASE-T という電話線に似た ツイストペアケーブルが使えるようになって、簡便に構築できるように なってきました。

最近では、大学構内など大規模の LAN では、FDDI という光ケーブル を使った高速のネットワークが組まれるようになってきています。 イ−サネットが 10Mbit/sec の速さなのに対して、100Mbit/sec と、 10倍のデータを同じ時間に送ることができます。

さらに、最近ではさらに高速の ATM と呼ばれる技術も使われるようになって きています。

WAN

企業などで、遠隔地の事業所をネットワークで結ぶ必要があるときには ワイドエリアネットワークを組む必要があります。 ここでは、電気信号を音声に変調して電話回線を利用する modem が 使われます。LAN に比べて遠くまで通信ができますが、伝送速度は 約 10Kbit/sec 程度までです。

WAN の分野でも ISDN や専用線などの高速ディジタル回線を利用することで 64 Kbit/sec から、1.5 Mbit/sec 程度の通信もできるようになってきました。

インターネット

インターネットとは、主に米国で発達した大学や政府などの研究機関を相互に 接続するための、計算機ネットワークです。 インターネットプロトコル(IP)という データ伝送規約に基づいており、広く LAN や WAN で利用されています。

最近まで「研究用」に利用目的 が限定されていたため、一般の利用ができませんでしたが、アメリカのクリントン 大統領とゴア副大統領が推進しようとしている、情報スーパーハイウェイ構想 によって急激に世間の脚光をあびるようになりました。実際、アメリカではインター ネットの商業利用が認められるようになり、ネット上で商売(製品の宣伝・ 注文の受付・納入機器の保守管理など)をする企業も増えてきています。

日本においても、地域によっては企業や個人が(専用・公衆)通信回線を使って インターネットに加入する例が増えてきており、今やインフォメーション・ インフラストラクチャ(情報基盤)としての地位を確立しつつあります。 (表1.)

このようにインターネットが、研究用ネットワークから情報基盤としての発展して いった理由は、主にアメリカを中心とする研究者達がよってたかって便利なユーザ インターフェースを開発してきたこと、構内 LAN の持つ高速データ転送の能力 が WAN でも利用できるまでになってきたことなどがあります。

     表1.日本のインターネット加入組織

gopher://gopher.nic.ad.jp/00/ftp/jpnic/domain-list.txtによる


   ドメイン          参加組織数
   JP                3    AD(ネットワーク管理)     27    AC(大学・高専・等)     416    CO(会社)         1026    GO(政府)          115    OR(組織)          153    地域ドメイン           59

インターネットの情報サービス

さて、このようなコンピューターのネットワークができることで、どのような ことができるようになるのでしょうか。 インターネットはもともと研究目的であるため、無料の情報提供システムが 発達しています。 ここでは、数あるインターネットの情報 サービスの中で代表的な 電子メール, ニュース, FTP, Mosaic などを紹介します。

電子メール
最近はパソコン通信などでも利用されるようになってきましたが、 インターネットメールは読むためにどこかのセンターの計算機 にアクセスする必要はなく、自分の利用している計算機にまで メールが届くのが特長です。
ニュース
ニュースは電子メールと違い、不特定多数が読めるようなメッセージです。 パソコン通信の掲示板機能と似ていますが、世界中の計算機にメッセージを 配付するためバケツリレー方式が取られています。
FTP
FTP とは、ファイル転送手順のことで、本来は転送できるデータは 計算機ユーザ個人に属するものです。しかし、これを不特定多数の 利用ができるようにした、Anonymous FTP が、フリーソフトや データの流通に利用されています。
Mosaic
最近になってウィンドウシステムが 普及し、グラフィカル・ユーザ・インターフェースがネットワークの上で使える ようになってきました。 Hyper-Text という、文章の中に情報の在りかを 埋め込んだものを、世界中に張り巡らせようというプロジェクトが始まり、 World-Wide Web (WWW)と呼ばれています。 中でも、Mosaic(モザイク)は文書情報だけでなく画像・音声・動画なども 扱えるため、非常に人気が高く、商用への開放に伴ってそのソフトウェアライセンス をもとに企業化しようという動きさえあります。(表2.)

     表2. Mosaic で扱える情報サービス

サービス名称と 詳細
telnet
外部のホストコンピュータに端末として接続する。
mail
電子メールの送信。
news
インターネットニュース。電子掲示板に似ているが、文書はネットワーク を 通じて配布され、特定のホストにログインする必要はない。
Anonymous FTP
UNIX標準のファイル転送手順(FTP)を誰でも利用できるように したもの。取得できるファイルには制限がある。
archie
Anonymous FTP で取得できるファイルがどこにあるかを検索する。
gopher
メニューをたどることで、情報を取得していく。
WAIS
Wide Area Information Service の略。キーワードで情報を検索する。
whois
人間(主にネットワーク管理者)についての情報を検索する。
WWW
World-Wide Web の略。ハイパーテキストの形式で蜘の巣のように情報の 網の目を張り巡らせようというプロジェクト。文書の中の言葉に、別の 情報を取得する方法を埋め込むことで、説明や画像・音声などの情報を たどっていくことができる。

高知大学情報科学科の WWW (Mosaic)

高知大学情報科学科においては、本年4月より、試験的に WWW のサービス を開始しています。図1.はXmosaic という、Mosaic のウィンドウ版ソフトを起動して このサーバーに接続した状態です。

図1. 高知大学情報科学科のWWW

ここでは、アンダーラインのついた項目に他の情報へのリンクがあり、 例えば、ひまわりの「最新画像」のところへマウスのポインタを移動して ボタンを押すとその画像が表示されます。(図2.)

図2.ひまわりの画像(高知大 WWW で表示できる)

おわりに---これからの展望

現在アメリカで進められている情報ハイウェイ構想は、家庭にまで高速の 光ケーブルを敷設することで、現在インターネットで供給されている 画像や動画などのサービスを、ビデオプログラムやオンラインショッピング など生活に結びついたサービスに広げていくことを目指しています。

このような情報基盤が整備されることで、地方にいても中央と全く 変わらない環境で、情報を受け取ったり、情報を発信することが できるようになるでしょう。その情報を生かすも殺すも本人次第という 「機会均等」の社会が到来するのかもしれません。